研究概要 |
本研究は、3年計画で、マルチエージェント・シミュレーション(MAS)の手法を用いて人文社会科学の基礎モデルを構築することを構想しており、その初年度として次の3つのアプローチを進めている。 第1は学問領域の基礎概念や基礎理論をモデル化していくアプローチである。昨年度作成した心理学的な人間行動特性の5因子Big5を組み込んだエージェント・モデルの改良をはじめ、世界10地域のゲーム論を取り入れた交流モデルなどを構築した。 第2は、1万年前の地域集団の形成過程について、家族・親族などの血縁集団から地域的な集団の形成と崩壊、再形成などを繰り返す地域集団モデルの作成を行った。また、1万年間の都市の形成過程について、2,500平方キロのメッシュでモデル作成を行い、1,000万人規模の都市が形成される過程をシミュレーションした。 第3は、世界モデルなどをMASモデルと統合してMAS-SD世界モデルを構築するアプローチである。これまで使用してきたSDのソフトでSDのモデルをMASのモデルに自動的に変換することを可能にした。 第3は、システム・ダイナミックス(SD)の世界モデルなどをMASモデルと統合してMAS-SD世界モデルを構築するアプローチである。これまで使用してきたSDのソフトでSDのモデルをMASのモデルに自動的に変換することを可能にした。 上記の3つのモデルを作成してきている。MASモデルの特徴はボトムアッフ価な創発にあるので、最も基礎的なモデルから重点的に構築している。 本研究では、内外で飛躍的な発展を遂げつつあるMASによる人工社会研究の中でも、特に人文社会科学の基礎的なMASモデルの体系的な構築を目指している。このような段階において基礎的なMAS人工社会モデルの構築は、人文社会科学分野全般でのMAS研究の進展に大きな意義があるものと思われる。
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