マルチエージェント・シミュレーション(MAS)で人工社会を研究する試みは、J.M.エプスタインとR.アクステルの『人工社会』(原著1996、邦訳1999)を出発点にしている。本研究の連携研究者である東京大学山影進教授は2002年に『コンピュータの中の人工社会』(2002)を編著し、『人工社会構築指南』(2007)を著わすなど先端的な研究やソフトの開発を進めてきた第一人者である。このような先駆的な研究によって人工社会の研究環境が整ったことで、コンピュータの専門家ではない人文社会科学の研究者にもようやく研究の可能になった。池田もその一人である。 本研究では、人工社会の基礎モデルとして、心理学の行動特性5因子(Big5)を導入して、(1)社会心理学的モデル、(2)社会的行為モデル、(3)相互行為モデル、(4)集団モデル、(5)社会構造モデル、(6)全体社会モデル、(7)社会変動モデル、(8)情報化、グローバル化、リスク社会、持続可能性、脱近代などのモデルを構築することを目的として実施した。研究成果は、池田のホームページで紹介しており、モデルのダウンロードも可能である。(1)~(4)のモデルは、個別の課題ごとに検討を行った基礎編(63個のモデル)として、(5)~(8)のモデルは1万年の人類史と将来を検討する中で総合的なモデルによる応用編(95個のモデル)として紹介している。 本研究では、山影教授からは研究全般にわたって、また、比較文明学会の染谷臣道会長(2009年当時)主催の還流文明研究会において会員各位からは1万年の人類史と将来に関するモデルについて、多くのご指導・ご助言を頂いた。篤く感謝する次第である。なお、本研究の不備な点については池田の全責任である。本研究が今後の人工社会研究の一助になれば幸甚である。 ※山影教授と染谷会長にはお名前の記載の許可を得ている。
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