研究課題
2010年度は他者の信頼判断を行う際の大脳生理学的なメカニズムに関する実験を5つ行った。ひとつは、他者の信頼判断に用いる脳部位特定のためのイメージング研究で、その結果「心の理論」課題遂行時と類似する部位の活性化と小脳の活性化が認められた。その結果の一部は11月に行われた北米神経学会にて報告された。現在英文論文の作成中である。残りの4つは脳内のマイクログリア細胞の活性抑制が信頼行動や信頼判断にどのような影響を与えるかの実験で、2010年12月に行われた。具体的にはマイクログリア細胞の活性を抑制する成分を被験者に投与し、その後(1)匿名の他者と信頼ゲームを行う、(2)TCI性格分析、不安尺度などの質問紙に回答する、(3)顔写真を示された人物と信頼ゲームを行う、(4)過去の信頼ゲームにおいて他者がとった行動をその他者の自己紹介ビデオを見て推測する、というものであった。実験データは現在分析中だが、この実験(1)の前に行ったプレ実験の結果では、マイクログリア活性抑制は信頼行動をわずかに抑制すること、信頼行動を行うか否かの判断時に依拠する情報が活性抑制時と通常時では異なることがわかった。この結果を今回の実験でより詳しく検討する予定である。これまでの結果は、日本社会心理学会および北米神経学会にて発表された。実験(2)-(4)のデータについては現在も分析中である。また昨年度までの研究成果は、審査付英文論文1本、審査付邦文論文1本にまとめられた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
社会心理学研究
巻: 26 ページ: 65-72
Letters on Evolutionary Behavioral Science
巻: (ON WEB)