研究課題/領域番号 |
21530673
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
廣田 昭久 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (40266060)
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研究分担者 |
小川 時洋 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (60392263)
松田 いづみ 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (80356162)
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キーワード | 対人コミュニケーション / 顔面皮膚血流 / 観察者 / 虚偽検出 / 感情 / 心理生理学的指標 |
研究概要 |
対人コミュニケーション状況での顔面皮膚血流量の心理生理学的指標としての適用可能性を検討するため、虚偽検出状況における前額と頬部の皮膚血流量変化について検討した。実験参加者を、検査を観察者の面前で受ける観察有条件と、一人で受ける観察無条件とに分けた。トランプカードの中から1枚を選択させ、そのカードの数字を尋ねる検査を実施した。質問は30秒間隔で呈示された。選んだ数字を尋ねる裁決質問、それ以外の数字を尋ねる非裁決質問に分けて分析した。その結果、質問呈示に対して顔面皮膚血流量は三相性(増低増)の変化をなし、観察有条件の前額部において、質問呈示後5~9秒で裁決質問の方が非裁決質問よりも有意に高い値が示された。また、観察の有無に関わらず、裁決・非裁決質問共に両部位で有意に増加したが、非裁決質問においてのみ有意な低下が示された。以上の結果から、顔面皮膚血流は、裁決・非裁決質問に対して弁別的反応を示し、さらに観察者という対人コミュニケーション状況においては、その弁別性が明瞭化することが示唆され、心理生理学的指標として活用できる可能性が示された。 研究を通して得られた結果を総合すると、一般的に他者の存在を前提とし他者に向けて表出される感情(怒り、恐怖、差恥)においては、対人コミュニケーション状況において顔面皮膚血流量が増大することが示された。一方、他者に向けては表出されない感情(驚愕、中性)や認知課題時には、観察の有無という対人文脈は顔面皮膚血流量には影響を与えないことが示され、顔面皮膚血流量は対人状況という社会的文脈の中で変化し、対人感情の生起を他者に対して明瞭に表示するといった対人コミュニケーション上の機能・意味を有すると推察された。特に、頬よりも前額部の方が対人(社会的)文脈をより良く反映すると考察された。また、顔面部位により異なる血管調節機序が存在している可能性が推察された。
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