1.シンガポールより共同研究者の教授二名を招聘し、日本の小中学校において授業視察および教員との質疑応答を行った。また、宮城教育大学において大学院生および教員向けに講演会を開催した(2009年12月18日)。シンガポールにおいては全ての小学生が小学校修了時に試験による振り分け(PSLE)が行われたのち学力別に中学校に進学し、日本で「中一ギャップ」と呼ばれる現象は存在しない。今回の招聘によりそれぞれ異なった教育システムを持つ国の研究者として互いの国の教育システムについて相互理解を得られ、今後共同研究を続ける上で大きな成果となった。 2.シンガポールの小中学校を訪問し授業の見学および教員への聞き取り調査を行った。シンガポールでは小学校における授業のほとんどが小学校修了時のPSLEに向けられたものとなっている。先行研究によりシンガポールにおいてPSLEによる圧力がメタ認知能力を促進させることが示唆されているが、今後調査結果を分析することにより小学校で身につけた学習方略が中学進学以降どのように活用されるかが明らかになると考えられる。 3.わが国における中一ギャップの発生メカニズムには学業不振の問題が関係していると予想される。シンガポールと日本それぞれの異なる教育システムを対比させるなかで、日本の小学校から中学校への移行段階における教育現場の課題を明らかにすることによって、問題行動への学習面からの対応が進むことが期待される。
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