2009年度に行った研究を紀要論文にまとめるために分析を行った。 大学入学後の学力低下の仕組みを分析し、学力形成の問題について考察した。順列・組合せの問題、三角比、ベクトルをターゲットの単元とし、カリキュラムの違い(国:日本、シンガポール)、専攻(文系、理系)を操作して調査した。 基本的には大学のカリキュラムが入学後の学力形成に影響力をもつが、高校時代の学習も影響力をもっているはずである。例えば、理系のシンガポール人は高校時代に応用数学の一つとして基本的な力学を履修するため、三角比やベクトルを学ぶ意義がかなり明確になっている。それに対して、シンガポール人の理系学生をのぞいた学生達にとって力学分野は必修ではないため、大多数にとってこれらの単元を学習する意味は不明のままである。この学習意図の明確さに関する差が残存学力の高さと対応していた。また、一部単元では、勉強時間(努力率)と残存学力の関係が負の相関係にあることが示された。
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