研究概要 |
カリキュラムや学習方法の質的な変化に生徒が対応できないことによって,中一ギャップが生じている可能性が考えられる(平, 2009)。定期試験の実施や受験圧の増大によって,中学進学に際して学習量が増加しても,簡単に諦めてしまわないような耐性を獲得させる筋道を考えることは重要といえるであろう。しかし,学習面での支援を具体的に考えるためには,学習方略を工夫するなど教科の違いを念頭においた方策が必要とされる。そこで,本研究では中学進学によってどのように勉強方法や教え方が変化するのか,当事者だった大学生たちに主要5教科に関して実際に回答を求めた。 具体的には,以下の質問に対して自由記述の形式で回答を求めた。『小学校から中学校へと進学したとき,あなたが主に担当している教科の勉強方法や教え方は変わると思いますか?日常的な勉強と試験勉強に分けて,予習・復習などできるだけ具体的に説明してください』各学生は,自分が専攻している教科に関してのみ,勉強方法等を回答したことになる(平均:448.3文字)。 その結果,たとえば,数学と理科のように同じく理系科目に関して,テキストマイニングを利用した対応分析を行ったところそれぞれ教科の独自性が示された。教科担任制が導入されるなど,教科の違いが明確になるのが中学校であるのは当然であるが,それが小学校の段階から漸次的に行われる可能性もあるだろう。むしろ,中一ギャップが生じるメカニズムから考えると,教科間の差違の認識が突発的に生じる生徒とそうでない生徒の違いがあるのかもしれない。今後の調査が必要とされる。
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