本年度、行った取り組みは、高校生を対象とした共感性を高めるプログラムの開発である。前年度に実施した大学生を対象とした共感性を高めるプログラムを精緻化し、高校生でも効果が見られるかどうか検討した。特に、年齢が低い対象については、プログラムを楽しんでできるかどうかが大きなポイントであった。これは参加者のプログラム参加へのモチベーションの維持にかかわり、また“楽しい”という感情が付随することによって、プログラムの効果が持続しやすくなることが期待できるからである。そのため、既存のグループワークを参考に、プログラムの改善を試みた。参考にしたグループワークは、構成的グループエンカウンター、インプロヴィゼーションであった。これらのグループワークから共感性を高めるのに有効であると考えられるエクササイズを取り上げ、高校生に適したプログラム(二日間、50分×3回: 計300分)を作成した。 高校生37名を対象にプログラムを実施した結果、共感性の認知面、すなわち、相手の立場に立って考える能力については、高まっていたことが明らかにされた。しかしながら一方で、共感性の感情面、すなわち、他者と同じ気持ちになる、同情するなどの能力について変化は見られなかった。この結果については、本プログラムが二日間だけ実施されたため、効果が得られなかった可能性が考えられる。共感性の感情面を向上させるためには、継続的なプログラムを計画する必要性も示唆されたと考えられる。今後、プログラムのさらなる精緻化が必要である。
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