今年度実施した研究は3点にまとめられる。1つ目は、研究代表者がこれまで行ってきた絵本の読み聞かせに関する一連の研究から、絵本の選択が読み聞かせにおいて重要な課題であることを明らかにできたことである。また、発達障害児を対象とした読み聞かせにおいて予め配慮しなければならない諸要因についてまとめるとともに、聞き手の行動分析の指標は読み聞かせ過程の行動を明らかにするうえで有効なこと、および継続的な読み聞かせが発達障害児には重要なことを明らかにした。 2つ目は、従来の絵本研究にもとづいて、よい絵本が備えている条件とは何かについて検討したことである。その結果、視覚的表現では、絵の連続性が明確か否か、一場面完結型か物語展開型かをはじめとして色と絵、絵の視点、絵本の方向性などを重要な要因として抽出できた。また、文章表現ではオノマトペの表現、繰り返しの要素が大切であると言える。その他、物語がファンタジーの世界か現実世界を問題にしたものかどうかという要因も大切と考えられ、今後の課題としては、それらが発達障害児ではどのような効果があるかを発達的に検討しなければならないことが示された。 3つ目は、現在、発達障害児の療育教室でADHD児を対象に継続的な絵本の読み聞かせ実践を行なっているが、その過程で明らかになったことはファンタジーの理解に関しては発達年齢で5歳半を越えていなければ理解が困難なことである。
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