研究課題/領域番号 |
21530682
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
近藤 文里 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00133489)
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キーワード | 発達障害 / ADHD / 絵本 / 読み聞かせ |
研究概要 |
本研究の目的は、絵本の特性がADHD児の読み聞かせに与える効果を検討することであった。そのため、絵本の集団読み聞かせ場面のビデオ分析から定量的に明らかにする方法をとった。当該年度は、(1)一場面完結型の絵本か、連続する場面で構成される絵本か、(2)オノマトペを用いた絵本がADHD児の注意の弱さにどの程度効果があるのか、について検討した。対象児は通園施設に通うADHD児で、生活年齢は5、6歳、発達年齢は2歳8か月から5歳8か月の男児6名である。 ADHD児を対象とした6回の継続的な読み聞かせを行い、場面構成やオノマトペの有無において異なる特徴をもつ6冊の絵本について各対象児がどのような反応を示すか検討した。「視点」、「発話」、「動作」に焦点を当てた分析結果から、一場面完結型の絵本の方が楽しめる子ども、ストーリーがある絵本の方が楽しめる子ども、絵本の構造に係らず楽しめる子どもがあることが明らかになった。しかも、このような個人差は発達年齢と関係していることが明らかになった。特に、一場面完結型の絵本を楽しめる子どもは発達年齢が低い子どもに多いのに対し、絵本の構造に関係なくどちらの絵本も楽しめる子どもほど発達年齢が高いことが明らかになった。 また、当該年度では、当初は予定していなかった問題についても検討した。それは、これまでの分析は子どもにとって1回目の反応を分析することであったが、1回目の読み聞かせの反応を用いることの妥当性は未検討であった。そこで、読み聞かせの繰り返し効果を検討した結果、繰り返し読み聞かせることで注意が増強されることが明らかとなった。しかし、異なる絵本を比較するという場合は1回目の反応を指標にすることの妥当性が保証され、指標としての安定性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に明らかにしようとした絵本の構造に関する違いがADHD児の読み聞かせに及ぼす効果を明らかにできたことはほぼ目的を達成できたと言える。また、絵本の読み聞かせを繰り返し行うことの効果を調べることができたことや、用いた研究方法の妥当性を確認できたことは成果があったと言える。しかし、(1)の当初の計画以上に進展していると必ずしも言えない理由は、オノマトペの効果については絵本選択にかかわる異なる方法を用いた検討が必要であるからである。
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今後の研究の推進方策 |
絵本にはその絵本を特徴づける要因が多くある。そのような要因のなかで、発達年齢との関係で検討しておかなければならない重要な問題が残されている。特に重要な要因は、オノマトペの効果であり、ADHD児の絵本の読み聞かせに及ぼす効果はさらに検討が必要である。今後はこの問題に焦点を当てて検討するが、基本的な研究の目的や方法に関しては変更を考えていない。
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