本研究は、絵本の特性がADHD児を対象とした読み聞かせに及ぼす効果を検討したものである。注意機能に弱さがあるADHD児が絵本にしっかりと集中できるかどうかは絵本の特性により大きく影響されると考えられる。そこで、本研究はADHD児を対象とした集団での読み聞かせ場面をビデオ録画し、対象児の視点、発話、動作について詳細な行動指標(例えば、視点であれば、対象児がどこをみているか等)の生起頻度を時間サンプリング法でとらえるという定量的な分析を行った。 その結果、ADHD児は一場面で物語が構成される絵本が、連続する場面で物語が構成される絵本よりも注意を集中しやすいとは必ずしも言えないこと。ただし、発達年齢が高くなるほど一場面完結型の絵本から継時的な絵も楽しめるようになる傾向があること。また、物語が連続する場面で構成される絵本でも、繰り返し絵本を読み聞かせることで絵本の内容理解が進み、注意を集中できるようになること。さらに、絵本の読み聞かせでは4つのタイプのオノマトペの効果が認められること、が明らかになった。 平成25年度に実施した研究では、絵と文との意味関連性の強さがADHD児の絵本の読み聞かせに及ぼす効果について検討した。方法は、これまでと同様に、視点、発話、動作に関するビデオデータの分析を行った。その結果、ADHD児では絵と文の意味的関連性が低い絵本ほど絵本や読み手を見る頻度が低下し、多動傾向が増大することが明らかになった。対象としたADHD児は、発達年齢で2歳8か月から5歳8か月の11名であったが、このような傾向は発達年齢において低いADHD児ほど顕著であった。
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