研究概要 |
2011年に超低出生体重児を対象とした学齢期検診を実施した。平均年齢8歳の初診児44名と平均年齢12歳の再診児36名の合わせて80名が受診した。初診児44名には、学習障害(LD)が6名(13.6)、自閉症スペクトラム(ASD)が8名(18.2%)、知的障害(MR)が3名、含まれていた。注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴を示した児は14名(31.8%)であった。2005年~2009年の受診者と合わせた226名では、LDが42名(18.6%)、ASDが34名(15.0%)、ADHDは76名(33.6%)に上った。定型発達(TD)は106名(46.9%)であった。対象児の中には周産期に慢性肺疾患、Wilson-Mikity症候群、脳室内出血(IVH)、呼吸窮迫医症候群、仮死、種々の感染症などさまざまな合併症が認められた。周産期の合併症の中で、発達障害との関係が顕著に見られたのは、脳室内出血(IVH)であった。IVHはGrade1(45名)Grade2(56名)Grade3,4(17名)の3群に分け、IVH無し(340名)を含めて4群で比較した。その結果、IQ、VIQ、PIQ共に群間に有意差が見られ、Grade3,4の値が他の3群に比べ、有意に低かった。ASSQの得点にも差が見られ、Grade3,4が他の3群よりも有意に高い値を示した(自閉症の特徴をより強く示した)。ASDは遺伝的要因が強い障害とされるが、超低出生体重児においては、脳室内出血や慢性肺疾患など周産期の合併症がASDのリスクを高めることから、周産期の環境要因が超低出生体重児におけるASDの発症に影響した可能性が考えられる。アイトラッカーによる視線行動の測定を行ったところ、ASD群はTD群に比し目の領域に視線を停留させる時間の割合が有意に低く、口の領域に視線を停留させる時間の割合が有意に高かった。さらに、ASSQ値が高いほど目の領域への視線の停留時間が短く、口の領域への視線の停留時間が長くなるという有意な相関が認められた。また、ASD群はTD群に比し画面上の人物の視線の動きに自分の視線を追従させた試行数が有意に少なかった。この結果はASDの特徴を検出する装置としてのアイトラッカーの有効性を示す。
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