研究概要 |
今年度は、一つに、保育場面において参加観察して得られた、123の教示行為エピソードを詳細に分析した。その結果、次のような特徴が明らかになった。(1)教授者となる子どもが、他者から頼まれないに、教示行為を自分から開始するものが多かった。(2)教える内容は、身体活動や製作活動など言語的に伝えにくい技能にかんするものが多かった。また、社会的規範について同輩に教えるものもみられた。(3)4歳児に比べ5歳児は、直接的な加入をしないで、学習者が自分で技能の向上ができるように間接的な教え方をしていた。以上の結果をもとにして、教示行為の定義を再検討し、幼児が教える内容は言語的に明示できる知識というよりも、技能や社会的規範が多く含まれることを示した。また、教える意図に着目したとき、広義の「知識・技能・規範性の不足している他者の誤った行為を、目標とする行為に修正する意図的な行為」と、「(知識・技能・規範性の不足している)他者の知識・技能・規範性を向上させるための意図的な行為」とに分けて規定できることを提案し、その動機的側面でのルーツについて考察した。 二つに、4,5歳児を対象に、折り紙の作り方を実験者が教えてもらう場面を設定して、教え方の発達的変化を検討するための実験を行った。上記の観察研究で示された、「他者の技能や能力の向上」を子どもが意図して教え方を工夫できるかどうかをみるために、学習者役の実験者がわざと間違えたり、対象児に支援を全面支援を求める条件を加えた点にこの研究のオリジナリティがある。この結果を整理して、さらに来年度の研究に発展させる。
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