研究概要 |
本研究の目的は,子どもと絵本(本)のかかわりに着目して,幼児期と小学校低学年期をつなぎ,絵本(読書)体験と「ことばの力」との関連を明らかにすることである.研究2年目の10年度は,小学校2年生を対象に学校生活の観察と教師へのインタビュー,及び読書記録(図書の貸出状況・「読書マラソン」)の分析から,学校と家庭での絵本(本)とのかかわりを調べた.これらの絵本体験と,研究者・教師・テストの3つの観点から捉えた「ことばの力」との関連を以下の通り検討し,成果をまとめた.1.研究経過(1)本とのかかわり:(1)観察10年4月~11年3月に計32回実施.(2)教師へのインタビュー毎学期終了時に観察結果をもとに実施.(3)「読書マラソン」3学期終了後回収し(回収31名,93.9%),全読書記録のコピーをとった.(2)ことばの力:年度末,教師と観察者で子どもの「ことばの力」について7つの観点から評定を行った.2.主要結果(1)本とのかかわり:学校場面では,担任教師による読み聞かせ,週1回の読書の時間の他,授業で課題が早く終わった子どもが本を読んで待つ,休憩時間に本を読むというかかわりが見られた.今年度「読書マラソン」が導入されたことで,一部の子ども達には競って本を手に取る姿が見られた.子どもがよむ本は,1年生同様,教師が読み聞かせた本やそのシリーズが中心であり,図書の時間に借りる本は友だちが借りた本が主だった.子どもと本の間には,両者をつなぐ「人」の存在が重要であることが,今年度も確認された.(2)ことばの力:読書量の多い女児は概して「ことばの力」も高かった.ただし,最も「ことばの力」が高いと評定された女児は,量(冊数)よりも質を重視した本の読み方をしており,読書記録や学校生活の観察から,直接的に「人」を介さず,独自に選書した本(文章主体)を読んでいた.自ら本の世界を楽しむ力が「ことばの力」と関係していると解釈された
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