研究概要 |
師弟関係の視点から、心理臨床家と陶芸家の専門家アイデンティティの生成と継承のプロセスを分析した。沖縄の陶芸家を対象とした面接調査から、①師を乗り越えていく葛藤よりも、母系的宗教と自然に融合した長い伝統に支えられた継承の特質、②専門家アイデンティティの形成過程における師弟関係のミクロな分析から、Erikson(1950)のEpigenetic Schemeに示された第I-VIIが、専門的職業世界の中で再体験されていくプロセスが見出された。 また、心理臨床家に対する面接調査から、師への同一化プロセスの特質が示された。わが国の師弟関係の特徴として、生涯を通じて師に同一化しつつ自らの独自性を育んでいく、母子関係を土台とした専門性の継承の特質が見出された。 アメリカ合衆国の心理臨床家との比較研究として、Austen Riggs CenterのMedical Staff (Psychotherapist, Ph.D.) に個別の面接調査を行った。面接調査の結果、①中年期に至るまで生涯を通じて精神分析家アイデンティティの達成と深化をめざして深く自己探求していくプロセス、②その達成と深化には、スーパ―ヴィジョンのような上の世代とのface to faceの関係性が決定的に重要な意味を持っていること,③アメリカの専門家養成における師弟関係は、上の世代をライバルとみなし、自主独立を是とする「父子関係性」が土台となっていることが示唆された。
|