研究概要 |
本研究の目的は,学校現場で実践可能な対話型授業デザインおよび教師の対話指導方法の開発である。こうした目的のもと,21年度には,対話型授業デザインとして児童による意見の構造化学習法を提案した。また教師による児童の対話への指導的参加法という新たな対話指導方法を提案した。これらの学習法と指導法の効果は,小学校での実際の授業のなかで検証された。 22年度は,これらの実績に立ち,第一に,21年度に開発した指導的参加法を学校現場に普及させるため,この指導法を導入した場合の諸現象を整理し,実施にあたっての指導法モデルを作成した。このモデルは,今後,教師向けの対話指導法リーフレットを作成する際に用いる予定にしている。第二に,思考力を養成するために有効と考えられる対話のテーマを明らかにし,小学校での授業のなかで実践化した。本研究では,対話を単に表現や伝達の手段として捉えず,思考力育成のための学習形態として捉えている。そのため対話過程のどの部分に思考力育成のためのポイントがあるかを考察した。その結果,対話のテーマをどのような内容にするかが重要であることを仮説化し,この仮説を実際の授業をとおして検証した。第三に,対話の深まりを捉える具体的な指標を提案するために,対話が深まっていく機序を明らかにした。これらは,思考力を養成するための,対話にもとづく学習モデルの開発であると総括することができる。 そしてこれらの研究上の成果を,論文と学会発表だけで公表しただけではない。小学校の教師に直接示すことができるようにするための授業研究会を発足させ,本研究成果の普及に努めた。
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