研究課題/領域番号 |
21530698
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研究機関 | 仙台白百合女子大学 |
研究代表者 |
沼山 博 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (00285678)
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研究分担者 |
菊池 武剋 仙台白百合女子大学, 人間学部, 非常勤講師 (90004085)
福島 朋子 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (10285687)
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キーワード | 教育系心理学 / 生涯発達心理学 / 成人期発達 / ハンセン病 / 生態学的分析 / コホート / 聞き取り調査 / 在郷家族 |
研究概要 |
本研究は、ハンセン病回復者間に存在すると考えられる療養所入所年によるコホート差を、療養所内の教育制度やその方法・内容の変化に対応させながら、把握することを目的とし、1)回復者に対する聞き取り調査、2)療養所および関連機関に残存する資料を収集・分析(関係者への聞き取りも含む)を行ったものである。平成22年度は、特に長島愛生園にあった入所者のための高等学校(岡山県立邑久高校新良田分教室)に関して中心的に調査を行った。調査の結果、示唆された点は次の通りである(今後調査の進展により変わりうる可能性に注意してほしい) 1)同教室の設立(昭和30年)は入所者の社会復帰への期待と願望を受けてのものであった。入試における競争率も当初は2倍弱であり、20歳代の生徒も存在した。生徒の多くは周囲から祝福され、将来を嘱望されて入学したようである。2)1)の反面、同教室で展開された教育には設立当初は差別的な対応を伴うものがあり、また社会復帰をむしろ阻むような指導が行われていたようである。そのため、強い葛藤状態となり、卒業後の展望を考えられない状況に陥った生徒も存在した。3)2)であげた差別性を伴った教育とは学校全体としての教育内容をみた場合であるが、個々の教員の振る舞いレベルでみると、必ずしもすべての教員が差別的であったわけではなさそうである。当時ハンセン病患者は隔離の必要はないとする見解が国際的に主流となりつつあり、そういった情報を得ていた教員もいたのかもしれない。4)同分教室は全寮制であったが、その寮生活は青年期一般にみられる性質を持っている。その一方で在郷家族との関係に思い悩む生徒も存在したようである。5)同分校における教育内容は、昭和30年代半ば以降変容する。生徒による変革要求がその基本的なきっかけとなっているが、同時期は園長が交替した時期でもあり、それによって療養所全体の力学が変化したこともその背景にあると考えられる。
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