研究概要 |
平成22年度は、21年度に開発した、『科学的リテラシーを育成し、動機づけを促す要因を組み込んだ、「認知的/社会的アプローチを統合した教授方略」の理論的枠組みに依拠した、「小学校の理科カリキュラム」』の教授効果を、検証授業を通して実証的に検討した。 具体的には、Maehr & Midgley(1991)による動機づけ構造の下位次元を理科カリキュラムに適用した教授方略を考案し、実際に、小学6年生理科「水溶液の性質」を対象とした実証的授業を行った。 当該授業における教授効果を測定するため、第1に、総合動機づけ診断(中西・伊田,2006)、効力予期(Bandura,1977)、課題価値(Eccles at al.,1983)等の、動機づけ的側面を扱った質問紙調査に基づく数量的分析を実施した。第2に、水溶液の性質と働きの概念理解を直接的に比較するために、単元前(事前)・単元後(事後)、4週間後(遅延)において、記述分析に基づく質的分析を実施した。第3に、授業過程の教師と生徒の発話と行為を録画記録・文字記録で採取し、授業過程の全体像や文脈の流れに基づく解釈的分析を実施した。これらの分析を通して得られた結果として、まず、日常経験と関連づける「課題」、最適な選択・決定を自らが行う「権限」の教授方略の働きかけは、学習観における「科学的手続きの重視」の上昇を導くことが示唆された。さらに、問題解決・意志決定を行う「グルーピング」、自らが目標を設定し評価する「評価」の教授方略の働きかけは、メタ認知的方略における「プランニング」の上昇をもたらすことが示唆された。 次年度に向けて、研究者と実践者の協同プロジェクト会議を開き、実証的授業の結果を統合的に検討し、教授方略及び理科カリキュラムの改善点を明らかにする。
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