本年度も愛知県教育委員会の協力をえて、およそ隔月に研究会を開催して、キャリアモデルについてのヒアリング結果について再検討したり、提起された問題について再分析してきた。その結果は、教員の生涯を見通した最終的なキャリア・モデルを構想することとなった。その要点を略述すると、40年近い教職の生涯キャリアを大きく二つに分析することとなった。前半は20代から30代後半までの(1)Step-up過程とその後の(2)Expert過程とし、Expert過程に至るためには、教員としての基幹的務能力を完成することを求めることとした。ここで基幹的務能力とは教科指導能力、生徒指導能力、特活指導能力、メネージメント能力の四領域を定義し、Step-up過程はその基礎的力を習得することと定義した。その上に立ってExpert過程では、教職を三つのタイプに区分して処遇することとする。一つは管理職教諭で主幹教諭、教頭、校長とし、二つは専門職教諭で指導教諭、主席教諭とした。この二つはそれぞれの専門的職務特性によって教職を遂行するものである。第三は基幹教諭で担任職務を中心に児童生徒を指導する教諭である。 この教職キャリア・モデルを実現するために、都道府県レベルの教職研修体系はいかにあるべきか、実際の研修体系プログラムを基にして、新しいキャリア・システムにマッチした研修プログラムを検討した。そこで指摘されたのは、教職のキャリア形成に大きな影響力をもつものが、各学校が独自で行っている自発的な現場研修であり、こうした校内の自己研修活動の実態を把握することであった。 最後に職能に応じたキャリア・モデルとその研修プログラムを実際に教育行政活動の一環として遂行するためには、どのような問題があるかを検討し、分析した。大きくは文部科学行政の支援が指摘されたが、個々の都道府県・市町村の自立的な取り組みが大前提であり、地元から教職のキャリア・モデルが自立的に実践されなければならないことを明らかにした。こうした認識、自覚が教育委員会教職員との共同の研究で芽をみたことは意義が深いと考える。こうした研究過程で諸外国のあり方が新しいキャリア・モデルの構築に大きく貢献していた。
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