小学5・6年生約140名を対象に、階層型学級適応感尺度と仲間集団指向性尺度を利用して友人関係に関する適応状況と、友人関係における排他性を構成する「固定的な集団指向」「独占的な親密関係指向」との関連を調査・分析した結果、友人関係に関連する適応感と排他性を構成する2つの因子との間には有意な正の関連がみられた。また、この2因子のうち「独占的な親密関係指向」のみが心身の健康状態に負の影響を与えることも示唆された。 卒業直後の中学生約580名を対象に、中学3年当時の学級雰囲気と、「独占的な親密関係指向」、学級適応感に関連する「総合的適応感覚」「精神的な健康」との関連を調査・分析した。小学生を対象にした先の研究で、排他性を構成する因子のうち「独占的な親密関係指向」のみが心身の健康状態に負の影響を与えていたことから、今回の調査・分析では、排他性を測定する尺度として「独占的な親密関係指向」に関連する項目のみを用いた。分析の結果、男女に共通して、学級全体の排他的な雰囲気の弱さは、学級での生活を楽しいと感じる「総合的適応感覚」や、精神的な健康状態に正の影響を与えることが示唆された。また、精神的な健康度が低い生徒ほど、「独占的な親密関係指向」が強いことも示唆された。こうした結果に加え、女子生徒のみにみられた結果としては、「独占的な親密関係指向」の強い女子生徒ほど、「総合的適応感覚」が弱いことも示唆された。今回の分析結果から、排他的な学級雰囲気は、「独占的な親密関係指向」に直接影響を与えるものではないことが示唆された。こうしたことから、学級全体の排他的な雰囲気が、女子生徒一人一人の仲間集団に対する独占的な親密関係指向に影響するのではなく、学級全体の排他的な雰囲気の高まりによって生じた不安感の高まりが、仲間集団に対する独占的な親密関係指向を強めさせる結果を生じさせた可能性がある。
|