研究概要 |
自分が所属する仲間集団に対して児童・生徒一人ひとりがもっている指向性の強さが,離散的な学級雰囲気の強さに影響を与え,さらに,離散的な学級雰囲気の強さが,その学級に所属する児童・生徒の仲間集団に対する指向性に影響を与えるといった循環的なプロセスが小学校高学年児童や中学生にみられるのかどうかを検討した。さらに,仲間集団に対する指向性や離散的な学級風土が,児童・生徒の学級適応感に影響を与える可能性についても検討した。小学5・6年生約1,400名から収集した調査データを分析した結果,仲間集団に対する指向性を構成する因子のひとつである「固定的な集団指向」の強まりが離散的な学級雰囲気を強め,離散的な学級雰囲気の強まりが仲間集団に対する指向性を構成するもう一つの因子である「独占的な親密関係指向」を強め,「独占的な親密関係指向」の強まりが「固定的な集団指向」を強めるという循環的な過程の存在が示唆された。さらに,離散的な学級雰囲気の強まりが,開放的・親和的な学級雰囲気を損なわせ,友人関係の良好さや学級適応感を低下させることも示唆された。一方,中学1年生約400名から収集した調査データを分析した結果,女子生徒に関してのみ「固定的な集団指向」の強まりが離散的な学級風土を強め,離散的な学級風土の強まりが「独占的な親密関係指向」を強め,「独占的な親密関係指向」の強まりが「固定的な集団指向」を強めるという循環的な過程の存在が示唆された。さらに,離散的な学級風土の強まりが,開放的・親和的な学級風土を損なわせ,友人関係の良好さや学級適応感を低下させることも示唆された。以上の結果から,小学校高学年児童および女子中学生に関しては,児童・生徒一人ひとりがもっている仲間集団に対する指向性と所属する学級の雰囲気とが循環的に関連する可能性がある。
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