本研究は、高次脳機能障害者のピアサポート実践を通じて新しい回復理論の構築をめざし、医療や福祉行政に対して関係発達論的観点から新たな回復モデルの提供を図ろうとするものである。平成23年度は以下の研究実績を残した。 (1)ピアサポート実践活動の社会的実装 概ね週1回以上のピアサポート実践と月例ピアサポーター委員会を実施して記録に残し、自己と関係の変容を示す事例の収集に努めた。ピアサポート実践活動は、新たに要請したピアサポーターが中心となって、NPO大阪脳損傷者サポートセンターの定期的活動として定着し、その中から当事者の自主的クラブ(ランチの会、陶芸、手芸、習字、音楽)活動へと発展した。 また秋には大阪府立大学作業療法士科の学生ボランティアを動員して当事者とその家族の合宿を催し、来年度以降の定例合宿に向けて、学生らと共に実行委員会を立ち上げた。 (2)現場専門家を対象とした研究会の開催とまとめ 生活施設や就労施設、ハローワークといった高次脳機能障害者と向き合う現場専門家を対象とした事例検討研究会を4回開催して地域との連携を深め、年度末には大阪府立大中之島キャンパスにおいてフォーラムを開催した。 (3)カナダのピアサポーター専門家と学術交流と学会発表 これまで交流を進めてきたVBIS、(Victoria Brain Injury Society)のスタッフと事例情報交換し、カナダバンクーバーで共同して学会参加と発表をした。
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