研究概要 |
本研究は、2~5歳までの幼児とその養育者を対象に、養育者の明示的な心的状態に関連する言語インプットと子の心の理論の関係を量的な縦断データに基づいて検討することによって、養育者の言語インプットの中でも心的状態語の量的な使用の違いが、日本の幼児の心の理論発達の差に関連していることを明らかにすることを目的としたものである。研究最終年度として、第3次調査および実験が終了し、合計51組の母子を対象とした縦断研究のデータ収集を終えた。平成23年度は、養育者の心的状態に関連する言語インプットおよび、子による心的状態に関する語の使用が、4歳齢における心の理論の獲得を予測することについて、その関連性を検証した。分析の結果、養育者だけではなく、子の心的状態語の使用も独立に、誤信念課題の達成度を説明することが統計的に認められた。これらより,子どもの心的状態語の獲得に母親の言葉かけ(特に心的状態に言及した会話)の役割が大きく貢献しているだけではなく、これらの子どもの心的状態語の獲得や使用が、長期的な発達の過程で子どもの自身の4歳以降にみられる心の理解の発達に大きな役割を持つことが示唆された。これらの研究結果については、国内外の学会及び論文集にて発表を行った。 加えて、養育者の子どもへの日常的関わり(養育スタイル)を、自他の心的状態への帰属を行う傾向と、子どもの心的状態語の獲得との関連から検討した。これらの分析結果については、学術雑誌投稿用論文としてまとめた。これらについては、現在投稿中(査読付)である。またこれらの関連研究結果についても、学会等での発表を予定(発表投稿申請受理)している。
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