研究概要 |
本研究は,慢性的なストレスが健常人の日常の生理状態に与える影響を明らかにすることを目的としている。そのために個人を繰り返し測定することにより,慢性ストレスや生活習慣の変化により生理指標が変化するという因果関係の検討を行なう。生理指標にはコルチゾールの日内リズム,ストレスの指標には質問紙を用いる。昨年度までに同一人を2回繰り返し測定するストレス調査により21名のデータを取得したが,本年度はその追加調査と,25名全てのデータを用いた結果の解析を実施した。 調査方法:昨年度と同様の手続きで調査を実施した。被験者4名は約1か月の間隔をあけ,普段通りの日常生活を送りながら2回ストレス測定を行った。まず測定に先立ち特性に関する質問紙に記入を行った。ストレス測定日の前日には,最近の生活習慣,ストレス,感情,健康状態等に関する質問紙に記入を行った。測定日当日は日常生活を送りながら8:00,11:00,15:00,20:00の1日4回,唾液の採取とその時の心理状態の記入を行った。約1か月の間を開けて,全く同じ測定を再度実施した。 解析:昨年度に取得したデータと合わせ,25名分のデータを用いた解析を行った。唾液中からはコルチゾール濃度を測定した。コルチゾールの日内リズムの指標として,時間を横軸,濃度をlog変換した値を縦軸とした時の,コルチゾール濃度の回帰直線の傾きの値を算出した。質問紙からはストレッサー,ストレス知覚,ストレス対処,感情状態,心身の健康状態等の尺度値を指標として算出した。各変数の1回目から2回目への変化の関連を検討したところ,生理指標(コルチゾールの日内リズム)の変化にはストレッサーとストレス知覚(ストレッサーをどう感じるか)が影響することが示唆された。またストレス知覚にはストレス対処行動が影響することが示唆された。
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