研究概要 |
ストレスの成り立ちのメカニズムは、環境と個人との相互作用および環境からの要求に対する認知的評価から説明されてきた(Folkman, 1984 ; Lazarus, 1966)。Lazarusらのモデルでは、環境からの要求に対する評価がストレス反応を規定するとしたが、評価の際の感情処理に関するする個人差要因が、ストレス過程および対処方略に及ぼす影響についての解明が進められていない。真に有効なストレスマネジメントプログラムの開発にあたっては、感情能力という個人差要因を考慮する必要がある。本研究は、平成21年度から23年度までに以下の点を明らかにすることを目的とした:(1)EIとストレス過程に関連する国内外の研究の動向、(2)EIが、ストレッサー-ストレス反応の関係を調整するのか、(3)ストレスマネジメントプログラムにEIを組み込むかできるのか。 平成21年度は、調査実施の準備を行った。まず、EIとストレス反応の関連を明らかにするための調査準備として文献研究、研究協力者からの聞き取り調査、資料収集を行った。これらの調査から仮説モデルを導きだし、平成22年度に実施予定のEIとストレスの関係を明らかにするための調査準備として、web調査用のシステム構築を完了した。 調査準備の過程で得られた成果を、以下2つのようにまとめ成果として発表した。 1)EIおよび感情の発達に関する文献研究を行い、その成果の一部が『図で理解する発達:新しい発達心理学への招待』の一章として公刊された。 2)職業場面のストレスを明らかにする予備的な調査データをまとめ、European Academy of Occupational Health Psychology第9回大会で分析結果の発表を行った。公的研究機関において、常勤事務職191名および研究職199名を対象に行った調査から、ワークライフバランスをサポートする組織風土がストレス要因を媒介しストレス反応を規定することが明らかになった。
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