研究概要 |
ストレスのメカニズムは、環境と個人との相互作用および環境からの要求に対する認知的評価から説明されてきた(Folkman,1984 : Lazarus,1966)。本研究では、Lazarusらのモデルで説明が行われていない、感情処理に関するする個人差要因が、ストレス過程や対処方略に及ぼす影響についての解明を目的としている。具体的には、平成21年度から23年度までに以下の点を明らかにすることを目的とした: (1)EIとストレス過程に関連する国内外の研究の動向、(2)EIが、ストレッサー-ストレス反応の関係を調整するのか、(3)ストレスマネジメントプログラムにEIを組み込むかできるのか。 平成22年度は、民間企業に勤務する一般成人222名(女性68名、男性154名)を対象に行った調査の分析を行った。具体的には、EIと既存のパーソナリティがそれぞれ独立した構成概念であるのかの検証を行った。能カモデルにもとづくEI尺度とESBI、ESCQ、それぞれにより測定されたEIとBig Fiveによるパーソナリティ得点の単純相関からは、ESBIによるEIは、感情の利用と調整で弱い相関が見られた一方、ESCQとパーソナリティは、有意な比較的強い相関が見られ、ESCQによって測定されたElがパーソナリティとオーバーラップすることが示唆された。能力モデルにもとづくEl測定ツールの精査にあたっては、EIのアウトカム変数の予測における弁別性の検討が必要であると考えられる。 研究成果を、日本健康心理学会第23回大会において、「能力モデルにもとづく感情能力尺度とパーソナリティの関連」として発表を行った。また、感情能力がストレス反応や健康行動にどのような関連があるのか、調査準備の過程で得られた成果発表を、2010年の国際摂食障害学会、アジア健康心理学会、アメリカ心理学会で行った。
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