研究概要 |
平成22年度は思春期の子育てを支援するための情報的サポートおよび自己理解を促進するための心理教育プログラムのあり方について検討を行った。 1.情報的サポートとして提供する有効な情報は,主に調査研究の成果から得たが,特に親子の相互信頼感のあり方に着目し,それは時間に安定性があり一貫して子どもの心理的適応にとって重要であることが示唆された。 2.心理教育プログラムに関しては,PAT(Parenting Attitude Test)と命名した,保護者の子どもに対する認知や感情,養育態度を測定する心理テストを使用し,それにより保護者が自分自身のあり方を振り返り,自己理解を深めること,グループワークにより互いに自己開示することで,他者理解と互いに受容される体験を深めることをねらいとした。そして,プログラムの体験内容と子育て支援の効果を測定するために,子育て支援プログラム体験尺度を開発した。子育て支援プログラム体験尺度は,「自己の理解・向上」,「子育ての動機づけ」,「否定的な気持ち」,「肯定的な気持ち」の4因子から構成された。PATを使用した子育て支援の心理教育プログラムに参加した中学生の母親87名の子育て支援プログラムの体験尺度得点についてクラスター分析を行った結果では,プログラムの体験には個人差があり,全体として肯定的な回答をしているタイプと,すべての面において低得点を示すタイプ,否定的な気持ちが特に際立って高い得点を示していたタイプの3種類に分類できた。また,PATの得点と子育て支援体験プログラム尺度得点の関連から,自分自身の子育てが上手くいっていると確認できた人はプログラムに対しても満足感があり肯定的な感想を示すが,逆に子育てが上手くいっていないことを確認した場合には,プログラムの体験も否定的なものになっており,リスクになる可能性が示唆された。
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