研究概要 |
昨年度は学校風土(進学校・学力困難校)の違いによって,無気力感のパターンが違うことを検証した。平成23年度はその結果に基づき,特定の学校で調査を実施し,学年×性別ごとに無気力感パターンを抽出して,その結果を教員へフィードバックする援助プログラムの構築を試みた。 調査対象校は公立のC中学校で,学習への気力が認められない生徒や,無気力感の高さから不登校になりかけている生徒などが散見された現状であったため,本研究への参加を快諾いただいた。 生徒の集中力・授業時間への配慮などの点から,コーピング・エフィカシー尺度および思考の偏り尺度の項目を,因子負荷量を論拠にそれぞれ16項目から12項目,28項目から16項目に減らした。また昨年度,調査依頼の段階で中学校教師から抵抗のあった,思考の偏り尺度の下位尺度「教師への偏った思考」項目の主語を,「教師」から「大人」へ変更して調査を実施した。 まず文言変更のあった「思考の偏り尺度」の因子分析を行った結果,先行研究とほぼ同様の因子構造が認められた。また各尺度合計得点の信頼性係数,また無気力感尺度・主観的随伴経験尺度との併存的妥当性も有意な値が認められたことから,尺度の信頼性・妥当性がある程度認められたと判断し,本両尺度を分析に用いた。 次に当該中学校における生徒の無気力感パターン検証(学年×性別)を行い,その結果と,結果に基づく対処方法のヒントについて記載したプログラム冊子を作成した。 続いてそのプログラム冊子を用いて,研修という形で教員へのフィードバックを行った。研修に関するアンケートの結果,9割の教員から「生徒理解に役立った」「生徒への具体的対応のヒントになった」と回答を得た。
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