研究概要 |
平成22年においては7回の研究打合せ会議を開催し,下記の研究成果を得た。 1.前年度から継続して神経科学,ならびに,投影法と脳機能に関する国内外の文献資料を収集し,それらを読解する作業をおこなった。得られた知見を下記の予備実験研究の成東の分析と本実験研究の実験計画の樹立に必要な基礎的理論として活用した。 2.前年度に実施した予備実験研究のデータを統計的手法により解析した。予備実験は,本実験研究にむけて適切な刺激提示プログラムの作成,実験機器の整備,実験デザインの構成等を検討するものであり,ETG-7100により計測された前頭前野のoxy-Hbをロールシャッハ法課題(以下,RIM課題)時と休息時との間で比較するものであった。統計解析の結果、一部でRIM課題時の前頭前野におけるoxy-Hbの増加を示唆する結果を得た。以上の研究成果を日本心理学会第74回大会(於,大阪大学)においる2件のポスター発表として公表した。 3.以上の予備実験研究の成果を討議することを通じて,本実験研究の実験計画を策定した。本実験研究では,刺激提示プログラムの改良をおこなうとともに,RIM課題と休息課題を各30秒と延長し実施した。また,定型図形(具象物の絵)に対してその名称の回答を求める比較課題を作成し,RIM課題と同様の実験デザインで別途実施した。また,前頭前野の脳機能と関連する心理特性として抑うつ傾向,不安傾向を取り上げ,それらを測定する心理測定尺度を施行した。以上の実験プログラムと心理測定尺度を含む実験を一般健常者36名に実施した。得られたデータに対し,休息時とRIM課題時のoxy-Hb変化量の比較,RIM課題時におけるoxy-Hb変化量の左右半球差,RIM課題時におけるoxy-Hbと抑うつ傾向,不安傾向の関係,さらには,RIM課題時のoxy-Hb変化量とRIM反応との関連などの多角的な観点から分析をおこなった。以上得られた成果を次年度の関連学会(国際ロールシャッハ学会,日本心理学会,日本心理臨床学会)において公表するための準備をおこなった。
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