研究概要 |
本研究の目的は,思春期・青年期における心の問題・危険行動を予防するための心理教育的プログラムを開発し,実践研究を行い,改訂を行った上で,ワークブックを作成することである。平成23年度は,これまでに得られた知見のまとめとワークブック作成を行った。 思春期版においては,これまでに評価分析を行い得た小中学生を対象に,介入前後の変化を検討した。その結果,学校適応・自己コントロール・問題行動の誘いを断る自己効力感・社会性・対人関係の自己効力感・情緒の安定が向上し,攻撃行動(いじめ・対人暴力・器物破壊)・いじめ被害・抑うつ気分が減少した。また,実施学級を対象に,子どもの心理社会的および行動上の変化と選択したレッスンの関連を検討した。その結果,いずれの時期においても,自己理解に関するレッスンを実施し,さらに,小学生では問題への対処解決に関するレッスン,中学生ではコミュニケーションに関するレッスンを行うことが望ましいことが示された。これらを踏まえて,ワークブックを作成した。 青年期版においては,これまで大学生を対象に一般教養の授業を活用して得られた,対人関係に対する自己効力感の向上,不安,抑うつの予防を維持しながら,十分な成果が得られていない大学生の深刻な問題である過剰飲酒予防をねらいとしたレッスンを追加した。その結果,これまでの成果に加えて過剰飲酒の予防も示された。これらを踏まえて,ワークブックを作成した。 さらに青年期版を応用して試行し肯定的な変化が示された研修医版においては,新人医療従事者(医師・看護師・薬剤師)へと対象者を拡大し,プロセス評価を実施した。その結果,医師では社会的コンピテンスの向上,不安・疲労の減少が示された。しかし,看護師では,明らかな肯定的変化が示されなかった。これらより,プログラムのさらなる改訂を行い,引き続き評価を行っていく予定である。
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