研究概要 |
本研究は、ひったくりをはじめとする街頭犯罪について、加害者、被害者、防犯主体という三者のステーク・ホルダー(利害関係者)にアプローチし、予防に向けた介入プログラムの研究開発と実践を目的とする。 犯罪心理学におけるこれまでの研究の多くは、(1)犯行現場の物理的側面から改善策を模索する、工学的アプローチ、(2)被害者になりうる人々の意識的側面に焦点を当てた、社会心理学的アプローチ、(3)加害者の人格・行動特性などを明らかにする臨床的アプローチ、の三つに分類できるだろう。いずれも研究目的はもちろん研究方法、分析対象とするデータ、現場介入への度合いが異なっており、個別的・専門的に研究が進められている。しかしある事件が発生するときには、それぞれの要因が複雑に絡み合っており、一側面へのアプローチでは、現象に対する十分な理解ができるとは言い難い。そこで本研究では、この三つの側面それぞれについて多角的にアプローチすることによってより深い理解を得、より効率的な介入プログラムを作成、実践的に応用して効果測定を行うことを目指す。 昨年度までで、被害者要因としての心理変数の洗い出しがほぼ完了し、尺度の完成を見た。また,マスコミの報道のあり方と市民の受け取り方の大きなギャップに問題があることが明らかになった。すなわち,調査回答者のデモグラフィック要因(年齢,性別,居住地,年収,最終学歴ほか)によって大きく回答パターンが異なり,少なくとも4~6のクラスターに別れること,同時に心理変数であるリスク認知要因からもいくつかのクラスターに分けられること,があきらかになった。また,統計情報の提示の仕方によって反応パターンが変化するかどうかの実験的調査も行われており,これらの成果が国際応用心理学会等で報告された。
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