研究概要 |
今年度の研究は、活性・不活性正負感情、感情表出抑制そして感情バランスが健康に及ぼす影響について、昨年度の横断研究の知見を予測的研究において検討することであった。これは、横断的研究では測定に時間的ずれがないことから変数間の因果を推定する精度が低いため、測定間に時間的ずれがある予測的研究デザインを必要としたためであった。 予測的研究デザインにおいては、オリジナルな測定布置を考案し、5週間ほどの間隔で同じ変数について3回の測定を実施し(T1,T2,T3)、階層的重回帰分析手法を用いて、T1からT3の目的変数の変化をT1からT2の説明変数の変化で予測するものであった。これは、これまでの2回測定による分析方法の問題を克服するために考案、採用された方法であった。 最初の研究では、活性・不活性正負感情が健康(抑うつと短期生活満足感)に及ぼす影響における感情表出抑制の効果を検討した。成人(大学生、大学院生)を対象とし、活性・不活性正負感情、感情抑制、抑うつ、短期生活満足感を測定する合計5つの自記式質問紙を上記のとおり3回実施した。階層的重回帰分析の結果、女性において、感情表出抑制は、交互作用なく短期生活満足感と正に関連し、また、不活性正感情は短期生活満足感と正に、不活性負感情は負に関連した。抑うつについては、効果は確認されなかった。 続く研究では、同様の方法で、活性・不活性正負感情が健康(抑うつ、短期生活満足感)に及ぼす効果における感情バランス(正感情マイナス負感情)の介在効果を検討した。その結果、不活性感情バランスが女性において短期生活満足感と正は全般に健康と正に関連し、また不活性正負感応が健康に及ぼす効果に交互作用がいくつか確認された。
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