研究概要 |
(1)Rey-Osterrieth複雑図形検査(Rey-Osterrieth Complex Figure Test)などの複雑図形を用いた構成・記憶検査を臨床で使用する場合には,反復実施による練習効果が問題になる。Meadorら(1991;1993)のジョージア医科大複雑図形(Medical College of Georgia Complex Figures)は,同程度の難易度を持った4種類の図版を使用することで練習効果を統制することを目的に開発された検査であるが,この検査を使用することで実際に練習効果を統制することが出来るかどうかの検討は実際にはほとんど行われていない。そこでジョージア医科大複雑図形から特に難易度が近い2つの刺激を使用し,大学生に1ヶ月の実施期間で2回実施したところ,有意な練習効果は認められなかった(論文1,3)。(2)片麻痺などにより利き手が使用できない患者の場合,非利き手で神経心理検査を行うことがあるが,その結果の解釈には注意が必要である。今回の研究ではRey-Osterrieth複雑図形検査を,非利き手(左手)で実施した場合に利き手と同等のパフォーマンスを示すことが可能かどうかを,右利きの大学生を対象として検討した。その結果,模写課題の成績は左右どちらの手でも変わらないが,模写課題を左手で行った場合には再生テストの成績が低下することを発見した(学会発表1)。(3)左右識別課題は,脳損傷や発達障害などの評価に有用であるが,わが国では標準的な検査方法や,成績の基準値は定められていない。そこで検査を開発するための基礎データとして,大学生の左右識別能力とその個人差を,パーソナルコンピューターを使用した課題によって検討した。また,左右の識別における言語ラベルの効果についても同時に検討し,左右識別には言語機能も関与していることを確認した(論文2,学会発表2)。
|