研究概要 |
(1)複雑図形検査における使用手の問題 非言語性記憶の検査であるRey-Osterrieth複雑図形検査を非利き手で実施した場合,利き手と同等の成績を示すかどうかを,右利きの大学生を対象として検討した。その結果,模写を非利き手で行った場合には,利き手で行った場合よりも再生成績が低下すること,再生時の使用手は再生成績に影響しないことを発見した(論文1編)。 (2)注意・遂行機能検査に関する研究 標準注意検査法(CAT)を,健常大学生に1週間の間隔で4回実施し,検査の信頼性と練習効果を検討した。その結果,多くの下位検査課題で練習効果が認められたが,1試行目と2試行目の間にのみに練習効果が生じるものと,4試行を通して成績が向上していくものがあった。また,試行を重ねることにより成績が低下する課題があることもわかった(学会発表1題)。 (3)空間性注意の測定法に関する研究 脳損傷による方向性注意障害(半側空間無視)の簡便,かつ感度の高い検査として臨床現場で多用されている線分二等分検査を用いて右利き健常者(大学生)の方向性注意の性質を検討した。その結果,右利きの健常者には左空間への注意のバイアスが存在すること,ただしその傾向は弱いものであり刺激の形態や配置によって容易に影響されることが分かった(論文1編,学会発表1題)。 (4)心理的な身体距離の測定法に関する研究 脳損傷者や発達障害者の身体イメージを評価するための予備研究として,大学生を対象とした実験を行った。身体距離と物品の大きさの評価では,異なる基準が存在することが確認された(学会発表1題)。
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