本研究は、ビデオ育児支援法(Video-feedback intervention to promote positive parenting and sensitive discipline : VIPP-SD) 」のわが国での適応可能性を実証することを目的として行われたものである。本年度においては、通常発達をしている3歳から4歳の親子4組を対象に、実際に介入を実施した。 その結果、本介入プログラムが開発されたオランダとは異なり、わが国では家庭に訪問して実施する方法があまり好まれず、人見知りや緊張で、家庭におけるビデオ映像が日常とは異なる特殊な場面になってしまい、そのことを考えに入れて介入が行われなければならないことが明らかとなった。そのため、介入マニュアルの大幅な改変が試みられることになった。一方、母親から介入の感想について伺うと、全員、ビデオを通じて育児方法を学ぶことがとても役に立ったと答えており、支援回数を追う毎に、子どもに対する行動が目に見えて変化し、子どもの信号に敏感になったり、子どものペースに合わせて関われるようになった。もっとも、子どものアタッチメント・パターンについては、介入の前後で大きな変化が見られるほどではなかったが、母親に対する行動頻度が増加するなどの変化があり、子どもの行動にも介入の効果が見られた。 昨年度の課題であったしつけ部分の行動療法的な介入については、使う言葉を工夫したり、ビデオ映像以外の日常場面の問題を取り上げるようにマニュアルに工夫を凝らした結果、実際の介入では、さほどの問題を感じることはなかった。
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