研究課題
これまでの研究で、気晴らし的活動のなかでも、とくに、身体的活動が気分の回復に高い効果をもつことが示された。今回、研究1として、気晴らし的活動(トレッドミルでのランニング)が抑うつ気分からの回復に対して緩衝効果があるのか直接効果があるのかを検討した。その結果、気晴らし活動は抑うつ気分を感じているときにだけ有効であるという緩衝効果が支持された。また、申請者のこれまでの実験では、トレッドミルでのランニング、用紙と鉛筆を使っての計算という気晴らし行動を採用していたが、研究2ではテレビゲームを用い、「身体的活動」としてボクシングを、「非身体的活動」として文字あわせのゲームを用い、それらに加え統制群の3群を設定し、各活動の気分への影響を解明することにした。その結果、気分得点に関しては、身体的運動条件(ボクシング)において、非身体的活動群や統制群と比較して有意に気分の回復の程度が大きかった。また映像視聴前と各活動後の比較において、脳波測定の結果、感性スペクトラム分析でも、統計的に有意ではなかったものの、身体活動群において「怒り・ストレス」と「悲しみ」の負の感情の数値が低く、「喜び」と「リラックス」の正の感情の数値が高くなっていた。以上のことから、実際の運動でなくても、ゲーム機を使用した運動様の活動でも、抑うつ気分を経験した後の活動として気分の回復に寄与すること、それが脳波という生理的な指標においてもある程度示された。本研究は、日常的に経験する抑うつ気分への対処というメンタルヘルスについてのセルフ・メディケーションに寄与することができる可能性があり、今後、実験ではなく、日常生活の中に身体的活動を取り入れ、その効果測定を行うことで、心理臨床の分野にも大きく貢献するものと考えられる。
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埼玉工業大学人間社会学部紀要
巻: 10 ページ: 45-50
Comprehensive Psychiatry
巻: 52 ページ: 109-117