本研究の目的は、青森県A町において自殺予防のための啓発活動(心理社会的な視点からの介入)を行い、その効果を質問紙調査などにより検討することであった。また、小学校において、心の健康をテーマにした授業を行い、児童(およびその家族)への啓発を行い、効果を検討することであった。 質問紙調査の効果検討については、前年度まで(21年11月から22年8月までの10ヶ月)に行われた、チラシを用いた心の健康に関する啓発活動の効果を調べるため、23年2月から3月に、A町在住の30~69歳の1割に当たる1094名を無作為に抽出し、質問紙調査を行った。その結果、744名から質問紙を回収した(回収率68%)。この啓発活動では、生活上の問題で困ったときにひとりで抱え込まず、専門家も含めた周りの人に相談する必要性などを、相談先の情報提供やイラストとともに住民に説明した。また、抑うつに関連する生活習慣や認知行動傾向を説明した。本年度はこの調査のデータを分析したが、その結果、生活上の様々な問題で困ったときの相談先の周知について、チラシを閲覧したことによる効果が示唆された。 小学校における授業による啓発活動については、A町内の全小学校(8校)の6年生を対象に、1時間(45分)の授業内で、臨床心理±による「心の健康教室」を実施した。授業実施後に受講した学童を対象にアンケート調査を行ったところ、授業に参加することで、自分の気持ちを家族や友人に伝えることの大切さや、家族や友人たちの気持ちを聞くことの大切さが理解されるなどの結果が得られた。「心の健康教室」は参観した父母にも公表であり、小学校で保護者向けの講演会が実施されたり、A町周辺の市町でも実施が広がったりした。 これらの結果から、本研究の取り組みは、自殺や抑うつを予防し、心の健康を高めるために有意義であったことが示唆された。
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