研究課題/領域番号 |
21530744
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石井 康智 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60103602)
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研究分担者 |
越川 房子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80234748)
内川 義則 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90147455)
白石 智子 宇都宮大学, 教育学部, 講師 (00453994)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 抑うつ低減効果 / 脱中心化 / マインドフルネス・プログラム / 気づき / 予防効果 / 認知行動療法 |
研究概要 |
8週間のマインドフルネス・プログラムの前後における効果を、心身の状態への気付きや受容・性格的側面(神経症傾向)から、脱中心化の促進効果、および抑うつ低減効果等について検討した。 大学生を研究対象として行ったマインドフルネス・プログラムでは、介入前後に気付きおよび脱中心化が促進され(BAQ得点およびPHLMSのAwareness尺度得点の有意な上昇)、抑うつが低減する可能性が示唆された(CES-D得点変化率の低減傾向)。また、抑うつ者との関連でNEO-FFIによる神経症傾向者について、プログラム前後の状態を多母集団同時分析を用いたところ、(1)技法群でNEO-FFIにおける神経症傾向からBAQへの影響指標の標準化解が0.49(p<0.5)、BAQからCESDが-0.35(p<0.001)、(2)統制群でいずれの影響指標も有意ではなく、(3)仮説モデルはデータヘの当てはまりがよく妥当性に問題がないことが示された。 大学生を対象とした集団認知行動療法による抑うつ対処・予防プログラムで、効果につながる要因の予備的検討を行い、予備的評価からセッションへの継続参加を促す動機付け要因が重要であることが示唆された。さらに、効果的技法の順序、形式、参加しやすい構成を考慮する必要が指摘された。 日本心理学会でワークショップを開催し、類似の技法とも言える自律訓練法においてマインドフルネス的態度を積極的に取り入れて行くことは臨床効果上、重要であるとした。さらに、マインドフルネス的な心的態度を適用することで心理・生理的効果が上がるであろうと討論した。 うつ病性障害に鍼灸治療が行われる。日本では随伴する身体症状を治療することが多い。うつ症状に対して随伴する身体症状に目を向ける重要性について発表を行った(北京)。これは、この当研究で取り上げている操体法による身体的アプローチを意識してのものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一定の成果を挙げているが、長期のプログラム実施は、実験的には個々人の動機を持続・実行させることは想像以上に難しい。被験者本人に持続させることが可能な被験者は、その様なことが出来るというサンプリング上の問題をも引き起こしかねない面を持っている。さらに実験に引き続き、フォローアップ実験もさらに持続を強いることから、計画全体の検証実験をより困難にさせる要因にもなっていることが実感される。しかし科学的な検証ではそこをも乗り越えねばならないのも事実である。ある程度病的うつ症状者を視野に入れた研究を進めるべきであるが、医師の強力な連携とサポートが必要で、かつ研究倫理上の問題をクリアして行かねばならない困難点があったため、今回の研究課題はそこまで踏み込まずに学生を対象にしたうつ症状の高低(程度)に合せて計画されている。 そのため、これまでの実験で得られたデータ数は当初の目標より少なく、研究課題は非常に斬新であったが、実際には大きな壁を引き受けなければならなくなってしまった。 しかし、これまでの実験研究では有意義なデータが得られ解析を進めることが出来た。学会発表が主であるが、成果も毎年発表してきている。研究期間の最後のこの1年に、これまでの成果を総合的にまとめて新しい試みの成果を世に問うこととしたい。また臨床応用への道を示していくことで当研究の達成度をより高めたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた実験結果を総合的にまとめ、内容について広く広報し、また臨床的な応用への提言をしたい。 マインドフルネス瞑想は、東洋的な思想の中核的な考えを基にしているが、今後より注目される技法であると想像される。マインドフルネス瞑想法の技法プログラムを簡略化して完成させ、実用に耐えられるものにする基盤を提示したい。認知行動療法はその効果に関しては一定の評価が得られた技法になっているが、マインドフルネスの考え方に通ずるものがあり、その点も含めて認知行動療法の広い広がりを取り出し示していくことも務めであろうと考える。一方、身体技法としての操体法は、動作法のようには研究が進んでいない。しかし臨床で広く使われるようになってきている。そのためにも実証的研究が必要不可欠であり、東洋的思想の一つである調身・調息・調心の考えを、動作と重心の面から具体的に検証していくことの道筋を示しつつエビデンスを集積していくことが必要であると考え、今回時間的余裕があれば、一部身体動作(操体法)のデータを少々集積する予定である。
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