研究概要 |
【研究1】 経済的自立のアスペルガー障害成人の困難感を,成人男性3名に半構造化面接を行い,質的分析を行った。『趣味』,『日々の楽しみ』,『感覚過敏』,『ストレス場面』,『ストレス対策』は少なく,ストレスを書き出すという積極的対処も指摘された。『ストレス回避』も少なく,我慢しているか,回避と自覚していない可能性が考えられる。『対人関係における困りごと』では,多くの項目が挙げられたが,友達のなさを寂しいと思わない点,および「友達を作ろうとしない」が「仕事上の話はできる」という係わりが適応によい可能性が考えられる。他に「時間に対する意識」の問題点が抽出された。 【研究2】 当事者を支える周囲の者を対象に質問紙調査を実施した。具体的には,発達障害を持つ子の親の会2団体の会員81名に対して質問紙調査を実施し,子どもの発達に気になることが生じた時,専門家への援助希求を促進する要因と阻害する要因について明らかにした。次に,特別支援学校高等部に在籍する子どもを持つ保護者130名に対して質問紙調査を実施し,現在や将来の心配事(worry)を測定する尺度を開発し,多変量解析を用いて,保護者の精神的健康との関係を明らかにした。 【研究3】 認知行動的介入法を中心に,ソーシャルスキルの獲得支援を狙ったグループ介入のためのパイロットプログラムの有効性を検討した.対象は5人のアスペルガー障害が疑われるHAF児で,表情理解や対話のルール,会話を始める/継続する,感情理解などを内包したプログラムを,隔週で10回の介入を行った結果,児童たちはERSSQを用いた評価によって社会スキルを改善させたが,一方CASTによる評価において,こだわりや困難行動などの得点が高くなる例もみられた.今後は,このプログラムを就労支援に活かしていくために,より社会性の向上を狙うべくプログラムの内容の精選と介入の質を高めて行く必要がある。
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