研究概要 |
本研究は、虐待を受けた子どもたちの心理的援助を模索するべく、被虐待児の特徴を明らかにすること、および対応への工夫について明らかにすることを目的としている。平成22年度の研究成果は以下の通りである。 1. 被虐待児の示す対応が難しい行動についての研究 1) 児童福祉施設職員を対象に、対応が難しい子どもの行動について分析とまとめを行った。経験年数にかかわらず職員の感情を逆なでするような行動が対応困難として挙げられた。職員から見た子どもの困難性の認知と対応との関連が、職種や経験年数によって異なることが明らかになった。 2) 経験年数の少ない若手と,中堅,ベテラン職員への半構造化面接の分析を行い、職員のキャリア発達の視点から検討した。経験年数によって子どもとの関係のとり方の違いが明らかになった。 2. 被虐待児の対処行動に関する研究 児童福祉施設2ヶ所にて追加の質問紙調査(対処行動とQOLおよびYSR、対人交渉方略)を実施しデータ分析を行った。コーピングスタイルとQOLおよび問題行動との関連を検討した結果,施設児童は他者への援助要請が弱く,回避コーピングと不適応感の関連が明らかになった。 3. 心理教育プログラム作成の試み 平成22年10月から12月にかけて児童養護施設の協力を得て、主に表現療法を用いて、小学校高学年の児童を対象に、気持ちの表現を目的とした心理教育プログラムの試行(計3回)を行った。平成23年度はその結果を検証する作業に入っている。
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