研究概要 |
本研究は,虐待を受けた子どもたちの心理的援助を模索するべく,被虐待児の特徴を明らかにすること,および対応への工夫について明らかにすることを目的としたものである。 平成23年度の研究成果は以下の通りである。 1.被虐待児の示す対応が難しい行動についての研究について 1)児童福祉施設職員を対象に行った「対応が難しい子どもの行動」の認知と「職員の対応」についての調査を分析し,査読論文として発表した。 2)経験年数の少ない若手職員への半構造化面接の結果を分析し,論文として発表した。 これらの研究によって,職員が子どもに対応する際に,どのような問題を感じているのかが明らかになった。 2.被虐待児の対処行動に関する研究について 児童福祉施設を対象として行った質問紙調査の分析から,施設に入所している子どもたちのQOLの特徴および対人交渉方略の特徴について検討し,それぞれ学会発表を行った。特に,施設の子どものQOLは一般児より全体に低いことが明らかになった。また,施設の子どもには,「あきらめ」や交渉の回避などが見られ,有効な対人交渉方略がとられていない可能性が示された。 3.心理教育プログラム作成の試みについて 平成22年年度に行った心理教育プログラムの試行についてのまとめを行い,論文として発表した。 4.上記の研究から,虐待を受けた子どもたちを施設内でケアする際の指針がある程度明らかになった。3年間の研究成果をまとめた報告書を作成し,調査協力関係者にフィードバックを行った。
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