高齢者のうつ予防のための心理教育プログラムの開発とプログラムによる介入効果の検証を行った。 (1) 平成21年度までに実施していた、高齢者のうつ予防を目的とした認知行動療法に基づくプログラムに、個別の人生目的を見いだし追求する内容を加えて、地域在住高齢者に実施した。セッション数は6回として前後に1回ずつの会を追加して効果の定着をはかった。実施にあたっては、マニュアル化したプログラムをスタッフに配布し、スタッフ教育にも重点を置いた。 (2) プログラムの効果は、従来の抑うつに関するネガティブ感情に加えて、ポジティブ感情や将来への見通し、うつ予防の知識と自己効力感などの尺度によって測定した。効果の検証は、参加群と統制群における介入前・介入後・介入3ヶ月後時点での、2群×3時点の比較によって行った。 プログラムによる介入の結果、感情面、将来への見通し、うつ予防に対する自己効力感など、いずれにおいても介入の効果が認められ、介入後3ヶ月後にも効果が維持されていた。そのため、本研究での介入が高齢者のうつ予防のなかでも、特に感情においての有効性が示唆された。反対に、プログラム参加後に向上したうつ予防に関する知識は3ヶ月後に低下が認められた。 以上の結果から、高齢者の抑うつの防止における、積極的かつ主体的な人生目標への取り組みを加えた本研究のプログラムの有効性が確認されたといえる。また、参加者が修得した知識の定着においては、参加者向けのマニュアルの整備や事後のフォローアップなど、プログラム参加後の長期的な効果の持続にむけての改良が課題としてあげられる。
|