研究課題
本研究の目的は、まず、がんの治療に伴う外見の変化が患者の心理的well-beingを中心としたQuality of Lifeに与える影響を明らかにすること、そして、外見の変化に対応した患者サポートプログラムを構築し、それを臨床応用に展開するための研究基盤を確立することである。そこで平成21年度は、がん治療が外見にもたらす変化の実態(発生頻度・苦痛度・QOLへの影響など)を明らかにするために2つの横断研究を実施した。(1)がん専門病院にて外来化学療法を受けている18歳以上のがん患者753名に対する質問紙調査を行った(回収率84.7%)。80.3%の患者が、治療により変化した外見に懸念をもっていた。脱毛など、治療に伴い外見に現われる身体症状(=外見症状)64項目のすべてに該当者がおり、その発現は多岐にわたることや、外見症状の中には、治療部分の痛みなどの一般的な身体症状(=身体症状)よりも苦痛度の高いものがあった。また、外見症状に対する苦痛の感じ方や対象部位には明らかな性差や年齢差がみられ、男性より女性が、また高齢者より若年者のほうが外見の変化を苦痛に感じ、心理的well-beingが低かった。その一方で、年齢に関わらず97.4%の患者が、外見の変化とケアの情報は病院で与えられるべきと回答しており、外見に関するサポートニーズは高いことが示された。(2)10歳~20歳の思春期小児がん患児42名に対する質問紙調査も実施した。治療内容に連動して、身体症状・外見症状ともに成人より体験頻度が高かった。外見症状については、成人同様の性差が認められたほか、年齢の高い患児の方が年齢の低い患児より、外見の変化を強く感じていた。また、小児・成人ともに、自分の外見変化に対処できたと感じている人ほど心理的well-beingが高かった。治療技術の進歩や外来治療環境の整備により社会生活を送りながら治療を続ける患者の増加している現状において、外見の問題は患者支援を考えるうえで重要であることが明らかになった。
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山野研究紀要 18
ページ: 11-17
Med Oncol (e-pub ahead of print)
日本健康心理学会 第22回大会論文集
ページ: 13
日本心理学会 第73回大会論文集
ページ: 257
Psychoonocology (e-pub ahead of print)