研究概要 |
成人がん患者と思春期小児がん患児に対する2つの横断研究を実施して,がん治療が外見にもたらす変化の実態と心理的苦痛,外見関連サポートプログラムに対するニーズの高さが明確になった(平成21年度)。 それをふまえて,平成22年度は,実際にプログラムの内容を構築するために必要な調査研究を実施した。 1.小児がん患児のQOLを改善して治療意欲を向上させるために,「外見のサポートを通じた小児がん患児のQOL改善プログラム」を作成する一連の研究を行った。(1)研究1は,外見サポートプログラムに必要な構成要素を検討するため,実際に患児が体験した具体的な問題やニーズを明らかにした。(2)研究2では,思春期患児の外見変化に対する養護教諭の意識を調査した。(3)それらをもとに研究3として,小児用外見サポートプログラム(第1案)の作成を試みた。成人がん患者と比較し,外見変化が問題となる場面が異なることや,学校などの対応が患児の心理面に大きく影響すること,半面,学校側でもその対応について戸惑いがあることなどが明らかになった。 2.成人に関しては,(1)外見のケア先進国であるフランスを訪問し,がん治療で代表的な病院や患者会の取り組みを調査した。外見に関する患者支援の現状と課題を調査する中で,日本との相違点や今後生じる可能性のある問題が示唆された。現在,それらを踏まえて,情報を提供するために必要な事項をまとめ直している。その上で,(2)最も外見の変化がQOLに影響を与えやすい若年がん患者(厚生労働省清水班研究「がん患者およびその家族や遺族の抱える精神心理的負担によるQOLへの影響を踏まえた精神心理的ケアに関する研究」と一部について共同研究)を対象に,プログラムの有用性について検証する研究を計画している。
|