研究概要 |
本年度は、快の情動記憶について、メタンフェタミン(MAP)によるCPPの習得と再燃におけるドーパミン受容体の役割を検討した。被験体としてWistar-Imamichi系雄ラットを用いた.CPP装置は白黒色の2つの側室と灰色の中央の部屋からなる装置を用いて,まずベースライン測定のための選好テストを行った。被験体に装置内を15分間自由に探索させ,各部屋での滞在時間を測定した.翌日からMAP(1.0mg/kg),生理食塩水(SAL)のいずれかを毎日交互に腹腔内投与し,その直後から一方の側室に30分間放置する場所条件づけを4日間行った.実験1では条件づけの15分前に,D1受容体遮断薬SCH23390(SCH:0.3,0.5mg/kg),D2受容体遮断薬Raclopride(Rac:0.3,0.5mg/kg)あるいはSALのいずれかを腹腔内投与した.条件づけの翌日にベースライン測定と同様に選好テストを行った.実験2ではMAPによる場所条件づけの後,MAP投与なしで,側室のどちらかに毎日交互に30分間放置する消去試行を4日間行い,その翌日に低用量MAP(0.5mg/kg)急性投与よってCPPを再燃させた。低用量MAP投与の25分前に,SCH(0.3,0.5mg/kg),RAC(0.3,0.5mg/kg)あるいはSALのいずれかを投与し,MAP投与の5分後に選好テストを行った。 その結果,Rac群およびSAL群では有意なCPPがみられたのに対して,SCH群ではCPPが成立しなかった.一方,SCH群およびSAL群で低用量MAP急性投与によるCPPの再燃がみられたのに対して,RAC群では再燃がみられなかった.したがって,ドーパミンD1受容体はMAPによるCPPの習得にのみ関与しており,ドーパミンD2受容体はCPPの再燃にのみ関与していることが示唆された.
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