研究概要 |
今年度は,実験の開始準備と複合場所文脈と,文字フォントの文脈依再認の実験を行った。 複合場所文脈の実験では,文脈として,場所,副課題,実験者を複合させて操作した。場所は,広さ,内装,明るさなどが異なる2種類の部屋を用いた。実験者は性の異なる2名の大学院生であった。副課題は計算課題と微細運動課題を用いた。学習時間(1.5秒/項目vs.4.0秒/項目)×文脈(SC vs.DC)の2要因実験参加者間計画を用い,80名の大学学部生を,この4群に,ランダムに配置した。連想価90以上のカタカナ清音二音節綴り40個を,ターゲットとして1個ずつコンピュータディスプレイ上に提示した。リスト提示の前後と,8個ごとに副課題を挿入した。10分間の保持期間の後に,40個のターゲットと40個のディストラクターをランダム配置して再認テストを実施した。その際,学習時と同じ場所,実験者のもとで同じ副課題を30秒行ってからテストする条件をSC条件,場所,実験者,副課題が異なる条件をDC条件とした。その結果,1.5秒/項目では有意な文脈依存再認弁別が生じたが,4.0秒/項目では消失していた。この結果は,漁田(1991)の結果と一致している。この実験結果は,学会で発表するとともに,漁田(1991)の結果と併せて,国際誌に投稿すべく,論文執筆に入っている。 フォントの文脈依再認の実験では,5種類のフォント(MSP明朝,id-カナO13,やまフォント,モフ字,さなフォン帯)を用いた。40個のターゲットを5種類のフォントで提示し,テストでは学習時と同じフォント(SC条件)あるいは,5種類中の別のフォント(DC条件)でテストした。保持期間は1日とした。その結果,フォントによる有意な文脈依存効果再認を見いだした。今後このフォント文脈の実験は,今回の旧文脈内変動だけでなく,新旧文脈間変動も加えて実施する予定。
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