研究概要 |
今年度は,BGM文脈と,単純視覚文脈の構成要素の内,文字色と項目提示位置に限定した文脈を用いて,再認実験を行った。BGM文脈の実験では,実験参加者のとって未知の楽曲を,文脈として用いた。学習時間(2秒/項目vs.4秒/項目)×文脈(SC vs.DC)の2要因実験参加者間計画を用い,80名の大学学部生を,この4群に,ランダムに配置した。連想価90以上のカタカナ清音二音節綴り40個を,ターゲットとして1個ずつコンピュータディスプレイ上に提示し,自由な方略で学習させた。10分間の保持期間の後に,40個のターゲットと40個のディストラクターをランダム配置して再認テストを実施した。その際,学習時と同じBGMのもとでテストする条件をSC条件,異なるBGMのもとでテストする条件をDC条件とした。その結果,2秒/項目では有意な文脈依存再認弁別が生じたが,4秒/項目では消失していた。このBGM文脈の結果は,複合場所文脈の結果と一致しており,エピソード想起仮説を支持し,ICE理論を支持しない。文字色と項目提示位置の実験では,4色とコンピュータディスプレイの4隅のユニークな組み合わせで,4種類の旧文脈を作り,意図学習させた。4分間の保持期間の後,黒色と画面中央を組み合わせて新文脈を構成し,再認テストを行った。その結果,HitとEAとにおいて同方向で同程度の文脈依存効果が生じた。再認弁別(A')では,HitとFAに文脈依存効果がキャンセルされ,文脈依存効果が消失した。この結果は,ICE理論を支持し,ピソード想起仮説を支持しない。以上の実験結果は,学会で発表するとともに,さらにデータを追加して,国際誌に投稿する予定である。 また,昨年度行った複合場所文脈の実験結果をまとめて,国際誌に投稿した。その結果,修正と追加実験の要請があった。これに対応すべく準備している。
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