1)ELマウス(ADHDモデル動物候補)とそのコントロールマウスに対し、オペラント条件づけを行ない、DRL事態における三項随伴性の獲得に対して、弁別刺激の明瞭度とADHD治療薬atomoxetine投与がどのような関数関係をもって効果をもたらすのかを検討した。 まず、昨年度の検討を深め、弁別刺激に混入する擬似刺激の率をさらに段階化し、あいまいな環境でELマウスとそのコントロールマウスが示す三項随伴性の維持を検討し、それへのatomoxetine投与効果を検討した。これにより、ADHD児にみられる衝動性の高さを行動分析学の手法で捉え、衝動性の定量化を試みた。また、衝動性をオペラント療法により緩和するための基礎モデル化を試み、さらには、行動療法と薬物療法の関数関係を検討した。 2)Wistarラットへの聴覚刺激に対する誘発電位について、ミスマッチ陰性電位およびpaired stimulationへの反応を測定する実験を進展させた。ラットの大脳皮質1次聴覚野・頭頂野に脳波用電極を固定する手術を施したのち、無麻酔無拘束のもとで測定フィールドに入れたラットに対して、ファンクションジェネレーターとオーディオアンプを用いて、フィールド直上のスピーカーから音刺激を呈示した。音刺激に対する各電極における誘発電位を、生体アンプと生体シグナル記録解析システムにより測定した。 この実験系のもと、各電位成分の振幅と、ミスマッチ陰性電位と、paired stimulationにおける第2音への反応減弱に及ぼすmethylphenidate投与の影響を検討した。これにより、ADHDをはじめとする注意障害を感覚関門機構の不全として捉えるとともに、前意識段階での不全として検討した。
|