研究課題
1.ELマウス(ADHDモデル動物候補)とその対照系統(DDYマウス)に対し、オペラント条件づけを行ない、反応レバー2基に対する選択行動において遅延価値割引事態でのSS(smaller-sooner)報酬及びLL(larger-later)報酬の獲得を実験し、結果に関する衝動性(Evenden,1999)を検討した。また、DDYおよびELマウスがVI事態の並立スケジュール下における対応則をどのように示すのかを検討した。これらの結果より、ELマウスはDDYマウスより結果に関する衝動性が高い可能性が示唆され、並立スケジュールの左右VIサイズ差が大きくない場合にはELマウスは対応則の適合度を低下させることが示された。昨年度までの一連の研究を統合して、ELマウスの衝動性、環境刺激への不注意が実証されたと考えられる。2.SHR(ADHDモデルラット)およびWKY(対照系統)への聴覚刺激に対する誘発電位について、ミスマッチ陰性電位(MMN)を測定する実験を進展させた。ラットの大脳皮質1次聴覚野・頭頂野に脳波用電極を固定する手術を施したのち、無麻酔無拘束のもとで測定フィールドに入れたラットに対して、ファンクションジェネレーターとオーディオアンプを用いて、フィールド直上のスピーカーから周波数の異なる2種の音刺激を呈示した。標準刺激および逸脱刺激に対する各電極における誘発電位を、生体アンプと生体シグナル記録解析システムにより測定した。この実験系のもとでMMNを計測し、これへの非中枢刺激性ADHD治療薬atomoxetineの投与の効果を検討した。これらの結果、WKYでは頭頂野に出現するMMNがSHRでは現れないことが示され、ADHD臨床知見に一致した。このMMN不出現はatomoxetine 2mg/kgおよび10mg/kg投与では有意に改善されなかった。これらより、SHRは脳波学的にもADHDモデルとして確立できる可能性があることと、ADHDの注意障害はその前段階の前注意過程の障害を伴う可能性があることと、SHRの不注意に対するatomoxetine投与効果は、ELマウスの衝動性とは用量等で異なる可能性があることが示唆された。
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