1. 本研究の目的 高齢者の記憶の信念は、不正確な自己の記憶能力のモニタリングに関係があり、高齢者の記憶行動にマイナスの影響を与えている可能性が指摘されているが、詳しいことは明らかでない。そこで本研究では高齢者の記憶の信念について、1) 日常的な記憶行動や記憶課題の成績との関係、2) 認知に関する暗黙理論との関係、3) 社会情報との関係、この3点から調査する。調査結果をふまえ、高齢者の記憶の信念に影響している要因や信念の特徴を若年層・中年層と比較することによって生涯発達の観点から総合的に考察し、その問題点を明らかにしたい。 2. 平成21年度の研究成果 平成21年度の自標は、平成22年度からの本格的な調査で用いる調査尺度・調査項目を洗い出し、予備データをとって、本調査に必要な調査項目を選定することであった。当初の予定通り、平成21年度は、(1)記憶の信念、(2)日常的な記憶行動、(3)認知の暗黙理論、(4)日常的な社会情報へのアクセスの実態、この4領域について代表的な質問紙や過去に行われた調査結果を調べ、その中から本研究の目的に合致した尺度や調査項目を選び、予備調査を行った。予備調査は、高齢者32暗、中年層26名、若年層38名、計96名に対して行われ、現在データを分析している。これらの分析結果をもとに、平成22年度の調査項目の最終選定を行う。なお、今回の予備調査の結果の一部を3月のつくば国際記憶学会で発表した。
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